野球を始めたころ、だれもが憧れた甲子園の夢。地方大会で敗れた者。コロナ禍に挑戦権を奪われた者。さらには、メンバーにすら入れなかった者。準硬式野球の選手は、栄光の道から外れ、挫折や屈辱を味わった選手が多い。そういった選手たちに「もう一度、甲子園を目指せるチャンスがあったら、君は何をするか?」という一つの問いから始まったのが、今回のプロフジェクトだった。発案者は、日大三で2001年全国制覇をしたときの元主将、杉山智広。「学生にもう一度、ワクワクするような体験をさせたい。その姿を見せることが、準硬式にとっての最大の普及」と考え、大会ディレクターとして学生たち挑戦する心を示し続けた。
野球はもちろん感動するが、その裏で本当に勉強を頑張っている
5月にプロジェクトリーダーに就任し、誰よりも重圧を背負っていたはずの池田有矢(早稲田大3年=名東)は閉会後、感情を抑えて冷静に話した。その言葉には自立して目標に向かう選手に対しての尊敬の念が込められていた。
「今日見ていただいたとおり、もちろん、みんな野球に真剣に取り組んでいて、みんな頑張っていて、見ていてそこに感動するんですけども、その裏側では本当に勉強頑張っていたり、他のなにかの活動に貢献していたりだとか、いろんなことをやっている選手が多いんです。そういう多様性というのが、準硬式の良いところだし、そういうことに積極的にチャレンジしているところが準硬式の魅力だと思うので、勉強も野球もどっちも両立しているところや、準硬式の本当の良いところをもっと知ってもらわなければいけないと思っています」。立ち止まることはせず、来年の開催に向け後輩たちにバトンをつなぐ。甲子園大会は「きっかけ」にすぎない。参加した全選手がこの経験を人に伝え、準硬式の価値を高めていく。選手自身の生き方が教本でもある準硬式。魅力発信はこれからも続いていく。
(取材・文/樫本ゆき)
〇…全日本大学準硬式野球連盟・鈴木眞雄会長あいさつ全文
今日お集まりいただきました1000人弱の皆様方、準硬式野球という日頃接していない野球ですが、こんなにまじめにスポーツを楽しんでいる若者の姿を見ていただき、私は本当にうれしく思います。学業とスポーツの両立を目指していますが、ゲームをご覧になった方はわかりと思いますがいろんな学部の学生がいます。医学部、経済学部、工学部も。大学生活の中での学業とスポーツをこれほど立派に両立させている諸君はいないと思います。今日の試合も、プロ顔負けの見ていただいても何も不満もおこらない、初めての野球を見るひとにも素晴らしい野球だったと実感していただけたと思います。会長としてこれからも、少し縁遠い準硬式野球かもしれませんが、実は地道に、真面目にやっているということをおわかりいただきたい。この大会のためにたくさんのご支援をいただきました。クラウドファンディングに協力してくださった皆さん、YouTubeをご覧になっていただいたみなさんに心から感謝申し上げます。選手諸君、特に学生運営スタッフの諸君を称えてあげてください。ありがとうございました。