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最速146キロ右腕が快投し 東日本選抜が「日本一」に。 甲子園から準硬式の魅力発信

 全日本大学準硬式野球東西対抗日本一決定戦が11月14日、阪神甲子園球場で開催され、東日本選抜が6-4で西日本選抜に勝利し「初代優勝」を飾った。7回には東日本選抜の道崎亮太(中京大4年=東邦)が146キロを計測し、2回1安打無失点の好投。最後は高2夏の甲子園で大阪桐蔭相手に投げた石井竜弥(中央大4年=浦和学院)が3者凡退に抑え歓喜の輪が広がった。
 球場には約1000人の観衆が集まり、12時から配信された全日本大学準硬式野球連盟公式YouTubeのライブ中継には計1万3000人以上が視聴。鈴木眞雄会長は「準硬式野球は学業とスポーツの両立を目指していますが、選手たちは医学部、経済学部、工学部などいろんな学部にいます。皆様にとって少し縁遠い準硬式野球かもしれませんが、地道にまじめにやっているということをお判りいただけたらうれしいです」と、来場者およびYouTube視聴者、協賛会社、130万円を達成したクラウドファンディング支援者に感謝を述べた。
 構想から6年。昨年の雨天中止を経て、連盟が掲げる「準硬式野球の魅力発信」を実現する大会となった。

「少し縁遠い準硬式ですが地道にコツコツやっているところをおわかりいただきたい」と閉会式であいさつをする鈴木眞雄会長

学生主体だからこそ継続できる
 野球を始めたころ、だれもが憧れた甲子園の夢。地方大会で敗れた者。コロナ禍に挑戦権を奪われた者。さらには、メンバーにすら入れなかった者。準硬式野球の選手は、栄光の道から外れ、挫折や屈辱を味わった選手が多い。そういった選手たちに「もう一度、甲子園を目指せるチャンスがあったら、君は何をするか?」という一つの問いから始まったのが、今回のプロフジェクトだった。発案者は、日大三で2001年全国制覇をしたときの元主将、杉山智広。「学生にもう一度、ワクワクするような体験をさせたい。その姿を見せることが、準硬式にとっての最大の普及」と考え、大会ディレクターとして学生たち挑戦する心を示し続けた。
「まずは自分でやってみよう」ということから、代理店に頼らず、運営はすべて学生主導で行った。2年前にプロジェクトチーム(PT)を結成し、ユニホームのデザインから、パンフレットの編集、スポンサー集め、メディアへの広報、SNS発信、ZOOM会議などを学生に任せた。質や内容はプロのレベルに達するものではなかったかもしれないが、未熟な部分こそが「学生主体の姿」。自分たちで考え、行動し、失敗を繰り返しながら学生たちは自分の足で動き、自立していった。そしてこの日、本当の意味での「学生による、学生のための大会」が実現したのだ。「お金をかければできることは増えますが、それでは長く継続していけない」(杉山)。学生たちの熱意が不可能という壁を溶かし、自分たちの力で持続可能な運営形態を創り出していった。

杉山智広大会ディレクターは日大三の元主将。甲子園という大きな目標に向かう尊さを準硬式の選手に伝えている

野球はもちろん感動するが、その裏で本当に勉強を頑張っている
 5月にプロジェクトリーダーに就任し、誰よりも重圧を背負っていたはずの池田有矢(早稲田大3年=名東)は閉会後、感情を抑えて冷静に話した。その言葉には自立して目標に向かう選手に対しての尊敬の念が込められていた。

「今日見ていただいたとおり、もちろん、みんな野球に真剣に取り組んでいて、みんな頑張っていて、見ていてそこに感動するんですけども、その裏側では本当に勉強頑張っていたり、他のなにかの活動に貢献していたりだとか、いろんなことをやっている選手が多いんです。そういう多様性というのが、準硬式の良いところだし、そういうことに積極的にチャレンジしているところが準硬式の魅力だと思うので、勉強も野球もどっちも両立しているところや、準硬式の本当の良いところをもっと知ってもらわなければいけないと思っています」。立ち止まることはせず、来年の開催に向け後輩たちにバトンをつなぐ。甲子園大会は「きっかけ」にすぎない。参加した全選手がこの経験を人に伝え、準硬式の価値を高めていく。選手自身の生き方が教本でもある準硬式。魅力発信はこれからも続いていく。

プロフェクトリーダーの池田有矢(早稲田大3年=名東)は高校時代「弱小野球部のマネージャー」。昨年も運営に携わった経験を生かし、選手たちの夢、甲子園大会を実現させた

(取材・文/樫本ゆき)

〇…全日本大学準硬式野球連盟・鈴木眞雄会長あいさつ全文
 今日お集まりいただきました1000人弱の皆様方、準硬式野球という日頃接していない野球ですが、こんなにまじめにスポーツを楽しんでいる若者の姿を見ていただき、私は本当にうれしく思います。学業とスポーツの両立を目指していますが、ゲームをご覧になった方はわかりと思いますがいろんな学部の学生がいます。医学部、経済学部、工学部も。大学生活の中での学業とスポーツをこれほど立派に両立させている諸君はいないと思います。今日の試合も、プロ顔負けの見ていただいても何も不満もおこらない、初めての野球を見るひとにも素晴らしい野球だったと実感していただけたと思います。会長としてこれからも、少し縁遠い準硬式野球かもしれませんが、実は地道に、真面目にやっているということをおわかりいただきたい。この大会のためにたくさんのご支援をいただきました。クラウドファンディングに協力してくださった皆さん、YouTubeをご覧になっていただいたみなさんに心から感謝申し上げます。選手諸君、特に学生運営スタッフの諸君を称えてあげてください。ありがとうございました。

2019年センバツ優勝した東邦の控え投手だった道崎亮太(中京大4年=東邦)が146キロを計測。卒業後は独立リーグで再び硬式野球でプレーする