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関西に強豪あり。2年連続全国決勝進出した大阪経済大が貫く「高校野球と同じ熱量」とは?

 準硬式の強豪校は関東だけじゃない。近畿六大学リーグ所属の大阪経済大は全日本選手権で2021年優勝、22年準優勝の実績がある近年の西日本最強チームだ。平日2時間半の練習が中心で、大手美来主将は「誰でも活躍できる環境がある」と話す。22年全日本選手権で決勝を戦った日本大のマネージャー今井瑠菜が強さの秘密を取材した。

 昨秋の甲子園大会、オーストラリア遠征に参加した関東地区の選手に「1番印象に残った大学は?」と聞くと、「大阪経済大」と答える選手が多かった。選抜メンバーとして接した際に「大経大の選手はどんな状況でも自分たちの課題を見つめて練習している」という印象を受けたそうだ。2021年、22年と2年連続で全日本選手権大会決勝まで登り詰めた大阪経済大。今回は主将の大手美来(4年=八戸学院光星)と、主務兼選手の津島良丞(4年=大塚)に「大阪経済大学の強さの秘訣は?」と聞くと、口を揃えて「ベンチの存在です」と答えてくれた。

 津島は、「試合に出ている人だけがベンチメンバーではないです。メンバーに選ばれた25人全員でベンチは作らないといけない。そして選ばれたからにはベンチに入れなかった選手たちに文句を言われるような練習態度や私生活は送れないです。」と話してくれた。

全日本代表の津島良丞(4年=大塚)。豪州遠征ではアデレードジャイアンツ傘下チームとチェンジボール形式で戦った

 大手も「大経大は他のチームより実力もないですし、練習環境が整っているわけではありません。8:00〜10:30という限られた時間で週5日しか練習ができない。授業があったらそちらを優先しますし。じゃあどうしたらいいのか。高校野球と同じ熱量で練習すれば良い。例えば、守備練習でも打撃練習でも一球にかける思いを強く持つ。そうすれば必然的に試合でも観客の人の心を掴めますし、巻き込んでいくことでそれが力になる」と熱く語ってくれた。

11月の豪州遠征では全日本代表の4番を務めた大手美来選手(4年=八戸学院光星)

 筆者は周りからこの2人の熱量はレベルが違う、と話しを聞いていたが、実際に取材を進めていく上で実感した。もちろん、チーム全体が同じ熱量で練習に励むことは難しい。2人もそれは重々痛感しているようだった。しかし、大手が語ってくれたように「高校野球と同じ熱量で練習に取り組む選手を増やす」、ここに大阪経済大学の強さを感じた。
 昨夏の全日本選手権大会では筆者の所属する日本大と大阪経済大は決勝戦で戦っている。乱打戦となった試合だったが、どんなに大経大が点を取っても「まだ足りない、もっと点が欲しい」という覇気を感じ、もしかしたら勝てないのではないかという恐さを体感した。この恐さは、甲子園をかけた高校球児の覇気と似たものを感じた。

全日本選手権大会の決勝戦で逆転に沸く大阪経済大ベンチ

■甲子園大会、豪州遠征中も欠かさなかった自主練習
 選手権の後、大手・津島はともに甲子園大会、オーストラリア遠征のメンバーに選出された。筆者もプロジェクトチームとして甲子園大会に参加したが、関西地区の選手は宿泊先のホテル前で必ず夜に素振りをしていた。その中にはもちろん、大手、津島の姿もあった。聞くと、オーストラリア遠征中も毎日欠かさずバットを振っていたという。
 普段関わることのない他大学の選手とも交流ができることが遠征の良さであるが、その反面、どうしても遊び感覚で捉えてしまう人もいるだろう。そんな中、なぜ2人は変わらぬ熱量で練習に取り組めていたのか?

「遠征は遊びじゃないですからね。いかに最高のパフォーマンスができるか、魅せられるかが遠征では求められているので」と当たり前のように答えてくれた津島。
 大手も「野球が好きで、練習が好きなので。大経は強くないので、それをしないと勝てないですし」とはにかみながら答えてくれた。素直にすごく格好良いと思った。遠征の「意義」を改めて2人から教えてもらったと思う。

全日本選手権大会決勝戦、1回に逆転打を放った大手

■受け継がれていく大経大の伝統
 関東の大学へのライバル意識についても聞いた。大手は「自分が1回生のときの全日本選手権では早稲田大に負けました。3回生(3年生)の時の9ブロック大会では関東に優勝されて、絶対に負けたくないと思っています」。津島も「関東は投手陣の枚数であったり、打者のスイングスピードであったり、やはりレベルが高いですね。昨年度の全日本選手権では日本大学に負けたので尚更です」と話す。「ライバル意識があったとしても、目の前の相手に対して自分の力を最大限出して戦うだけです。ただ、オーストラリア遠征では米崎監督(日本大監督、オーストラリア遠征全日本選抜チーム監督)に『大経は怖いぞ!』って見せつけてやろうと思っていました」と関西人らしくユーモアを交えて話してくれた。

全日本選手権決勝戦、津島の二塁打で5点目を挙げる

 取材を進めていく中で、選手たちのチーム愛が強いと感じた。日本一を目指して練習してきたチームメートについて、大手は「4年間ついてきてくれたチームメイトに感謝しかないです。特に津島にはキャプテン以上に仕事が多い主務としてたくさん助けてもらった。本当に野球に熱い男で、頼れる男でした」と話し、津島は「大手はキャプテンとして日本一です。人柄が本当に良くて、人を惹きつける力があります。練習にもその人柄が出ていて、大手みたいになりたいな、偉大だなと思います」。質の高い練習を、互いにリスペクトし合いながら行い、頂点を目指していた大阪経済大。この伝統はきっと後輩にも受け継がれていくはずだ。

2年連続の全国制覇は果たせなかったが、2022年準優勝の栄冠に輝いた大阪経済大

(文/今井瑠菜 新3年=日本大、写真/大阪経済大提供)