“JUNKOWEB”

全日本が底力を見せるも得失点差で全関東が優勝! 豪州遠征手記3/4

11月下旬、全日本大学準硬式野球連盟、関東地区大学準硬式野球連盟が3年ぶりにオーストラリア遠征を行いました。遠征3日目、アデレードジャイアンツ傘下のチームに全勝した全日本、全関東は得失点差をかけて最終戦でぶつかります。さて結果は? 学生委員として同行した鈴木陸太関東地区学生委員長(東京大4年=東海)による計4回の連載特集です。

↓前回記事はこちらから↓

www.junko-web.com

 

■愛知学院大・藤田の左中間に適時二塁打で全日本が逆転
 前日より少し肌寒い朝を迎え、大会3日目となる11月26日がスタートした。この日は、第一試合でALL JAPAN(以下全日本) vs Adelaide Giants、そして第二試合には全日本VS ALL TOKYO(以下全関東)を行い、全てのカードを終えることとなる。全日本が3戦全勝の全関東を破って優勝を勝ち取るためには、この日連勝することが最低条件である。運命の最終日の幕が開けた。
 全日本とAdelaide Giantsの試合は、初回からGiantsの猛攻が続いた。初回、全日本先発の山崎陽平(帝京大・3年)が相手打線に捕まり、味方のミスも重なっていきなり3点を先制される。さらに2回には、Giantsの4番で日本人のKoki Yonezawa選手に本塁打を浴び、5点のリードを許す苦しい展開となる。しかし全日本は、2回裏に松室歳唯(大阪商業大3年=高取国際)の適時打で1点を返すと、その後も打線がつながり、4回に岩﨑魁起(大阪経済大4年=三田西陵)がしぶとくレフト線に適時二塁打を放ちついに同点に追いつく。また投手陣も山崎の後を継いだ清野佑馬(日本大3年=日大鶴ケ丘)、佐伯奨哉(同志社大4年=中京)らが好投し、得点を許さなかった。そして同点で迎えた6回裏、チャンスで9番藤田櫻(愛知学院大4年=聖隷クリストファー)が左中間に適時二塁打を放ちついに逆転に成功。見事な大逆転劇で、全日本が優勝に望みを繋いだ。決勝適時打を放った藤田は、打った場面について「後ろに繋ぐことだけを考えていたので、それが良い結果につながって嬉しいです」と話す。まさにお手本通りのバッティングであった。
 また1死満塁のピンチで登板し、打者5人をパーフェクト、4奪三振と完璧な投球を見せた清野は「ピンチだったので、とにかく0点で抑えるために、コースが甘くならないよう意識しました。結果0点で抑えられてよかったですし、普段対戦できない海外の選手との対戦はとても良い経験になりました」と語った。大量リードを許す展開でも諦めない、全日本の底力がこの試合で見られた。

Giantsの選手と交流する全日本の選手

3回にリリーフし流れを持ってきた古賀涼平(日本大3年=日大鶴ケ丘)

■「日本の選手は相手投手のモーションを盗み走力を生かした」大阪経済大・大手
 これで日本の2チームはAdelaide Giantsに対して4戦全勝という結果となった。Giantsと対戦した選手たちに、日本のチームとAdelaide Giantsそれぞれがお互いに勝っていた部分はどこだったのか聞いてみた。全日本で4番にも座った大手美来(大阪経済大4年=八戸学院光星)は、日本チームは投手力と走力が優れていたと話す。「日本の投手陣は特にコントロールが良い。Giantsの投手はパワーで押す投球だったが、四球も多くその分大量得点につながった。また相手投手のモーションが大きかったこともあり、走力を生かして次の塁を狙うことができた」と言う。またGiantsとの試合で左中間への三塁打を放った全関東の内海雄太(国士舘大世田谷3年=東亜学院)は、日本チームが優れていた点として攻守の両面で基本に忠実であり、細かいミスが少なかったことを挙げた。やはり走・攻・守・投のどれをとっても、丁寧さ、緻密さという点では日本チームの方が優れているとプレーしている選手の視点でも感じたようである。
 一方、Giantsの選手が日本に勝っていた点として、大手は「初球からのフルスイングの強さと肩の強さ」、内海も「打球の強さ」だと話す。スタンドから見ていても身長や体格にかなりの差があることは感じていたが、やはり同じグラウンドに立った選手からすると怖さを感じるほどのパワーの差を実感したようだ。大勝も接戦での勝利も見られたGiants戦だったが、その裏にはパワーに対して技術と緻密さで対抗する日本選手団の奮戦があり、そしてこれがJUNKOの武器であると再認識することができた4戦となった。
 そして迎えた全日本と全関東の最終戦。全関東が勝利あるいは引き分けで全関東の優勝、全日本が勝利すれば同率優勝(ただし大会規定で、直接対決の得失点差から全日本が3点差以上で勝利すれば全日本が1位、1点差であれば全関東が1位)と、この試合の結果で今大会の優勝が決まる。運命の一戦が始まった。
 試合は初回に全日本がチャンスを作り、中島秀馬(日本大4年=日大二)の犠飛で先制する。一方全日本先発の今村一心(福岡大3年=佐賀北)が3回を投げて無失点と完璧な投球を見せ試合の流れを作った。登板時の心境について今村は「ALL TOKYOには初戦で負けていたので、先発として絶対に先制点はやれないと思っていた。先発のマウンドには慣れているので、余計なことは考えず、いつも通りのピッチングを心がけました」と話してくれた。反撃したい全日本打線だったが、全日本投手陣の熱のこもった投球の前に散発3安打に終わり得点を奪えなかった。全関東で全日本と対戦した吉野智喜(慶應義塾大2年=慶応義塾)は対戦した全日本投手陣の印象について「全日本選抜だけあって、普段対戦している投手とはストレートの伸びや変化球の曲がりが一味違ったし、テンポも良かった」と言う。登板した全員が貫禄の投球を披露し、全日本の意地を見せた。ただ、首位奪取のためには1点差では終われない全日本。しかし、全関東投手陣の粘りの投球を前に、2回以降チャンスは作りながらも得点には届かず、結果は1―0で全日本の勝利。そしてこの結果を以て、両チームの同率優勝と、得失点差による全関東の1位が確定した。

ALL TOKYOで貴重な1安打を放った金澤永輝(明治大3年=花巻東)

前日に続きこの日も完璧な投球を見せた藤中壮太(法政大2年=鳴門)

 優勝を達成し、今大会のMVPを獲得した全関東の山崎大翔主将(中央大3年=花巻東)は、「今回の遠征の開始にあたり、監督から『必ず優勝しよう』と話をされていたので、優勝できて嬉しい気持ちでいっぱいです。まさかMVPにもなれるとは思っていなかったのですが、選んでいただけて光栄です」と話してくれた。
 全日本、全関東で共通して、今大会は接戦を粘り勝つ姿が多く見られた。急造の選抜チームでありながらも高い「チーム力」が見られたことは、各々が豊かな個性を発揮し、その個性を互いに認め合ってチーム力に昇華する、JUNKOの目指す「ダイバーシティ」と「インクルージョン」の賜物であったように思う。単なる海外遠征ではなく、選抜チームとしてこのような姿が見られたことも今大会の収穫の一つだ。

優勝しトロフィーを受け取る山﨑大翔主将(中央大3年=花巻東)とALL TOKYOの選手たち

今大会最優秀打者賞を獲得した主砲鈴木歩夢(法政大3年=明星)

■A・ジャイアンツ公式戦のジャパンデーで「六甲おろし」、「闘魂込めて」を熱唱
 この日の夜に行われたAdelaide Giantsの公式戦では、観戦に来た方や試合の放送を見ている方に日本の文化・雰囲気を楽しんでもらう「ジャパンデー」というイベントが行われ、日本の選手たちは全員、浴衣や法被などの日本ならではの服装に身を包んで観戦した。試合前には近藤みのり(愛知大4年=桜台)と池田有矢(早稲田大2年=名東)による始球式が行われて球場を沸かせ、また試合中のイニング間には全日本、全関東それぞれで「六甲おろし(阪神タイガース応援歌)」と「闘魂こめて(読売ジャイアンツ応援歌)」を熱唱し、試合を盛り上げた。日本では滅多にできない経験に、選手たちも終始興奮した様子だった。試合の観戦客は200人ほどおり、中には現地に住む日本人の方も20人ほど球場を訪れていた。それほど大きくないスタンドで、50人にも及ぶ日本の大学生がスタンドで試合を盛り上げる姿は観客の方の印象に強く残ったことだろう。このイベントを通して、日本に、そしてJUNKOにこれほど注目してもらったことが、次回以降の遠征の更なる進化の礎になることは間違いない。今後は日本にとどまらず海外まで、JUNKOの行く末から目が離せない。

浴衣と法被姿で始球式を行う近藤みのり(愛知大4年=桜台)と、池田有矢(早稲田大2年=名東)

2回のイニング間「六甲おろし」を熱唱するALL JAPANの面々


(文/鈴木陸太・東京大4年=東海、写真/全日本大学学生委員)