11月下旬、全日本大学準硬式野球連盟、関東地区大学準硬式野球連盟が3年ぶりにオーストラリア遠征を行いました。準硬式球、硬式球を織り交ぜた「チェンジボール方式」は準硬式を再認識する気づきがあったようです。学生委員として同行した鈴木陸太関東地区学生委員長(東京大4年=東海)による計4回の連載特集です。
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■趣向を凝らした「日本からのお土産」をプレゼント
オーストラリア遠征も2日目に突入した11月25日。この日は第1試合でALL TOKYO(以下、全関東)とAdelaide Giantsの2回戦、第2試合でALL JAPAN(以下、全日本)とAdelaide Giantsの2回戦が行われた。
第1試合の前には、全関東の選手からGiantsの選手に、全員が1つずつ持ち寄った日本のお土産を手渡した。この日途中出場した岡部泰庸(帝京大宇都宮3年=青藍泰斗)は竹トンボとコマを渡したという。「日本の伝統的なおもちゃであることと使い方を英語で説明した。相手選手からは感謝の言葉をかけてもらい、家に帰ったら遊んでみると言ってもらった」と話す。
英語でのコミュニケーションに苦戦しながらも、Giantsの選手も拙い英語に笑顔で耳を傾け、中には長時間話し込んでいる選手もいた。翌日の朝には全日本も同様のセレモニーを行い、親睦を深めた。互いの文化を知り、外国語での積極的な交流を図る、まさに今回の遠征を象徴するような瞬間であった。
全関東とGiantsの試合は、一進一退の攻防となった。全関東は初回に東海新(東海大3年=平塚学園)の適時打で先制するも、2回、3回に先発稲野辺元太(東海大2年=東海大相模)がGiantsの強力打線に捕まり、3点を奪われ逆転を許す。
しかし全関東は5回、6回に打線がつながり同点とすると、7回に先頭で二塁打を放ち出塁した吉野剛史(立教大3年=蕨)が相手のバッテリーエラーで生還し勝ち越し。4人のリリーフによる無失点リレーも光り、6―3で全関東が接戦を制した。リリーフで好投した丸嶌遼(東洋大2年=海星)は「普段日本で対戦する打者とは体の大きさ、スイングの強さが全く違った。恐怖心はあったが、常に厳しいコースへのストレートを意識して投げ込むことができたのは良い経験になった」と話す。また、決勝のホームを踏んだ吉野剛史は、「Giantsの選手は体格が恵まれていたのはもちろんだが、走塁が想像以上に積極的だった。勝負どころでチームの勝利に貢献できてよかった」と語っており、豪州プロ選手を相手にするプレッシャーを伺うことができた。拮抗した両者の実力と、終盤に逆転できる全関東の勝負強さが見られた好ゲームであった。
午後に行われた全日本とGiantsの試合は、全日本が圧巻の試合運びを見せた。初回、二塁打を放った中島健輔(日本大3年=日大鶴ケ丘)が生還し先制すると、3回、4回にも打線がつながり追加点を奪う。5回には須田翔(北星学園大3年=札幌国際)に本塁打が飛び出すなど、一挙7点を奪う猛攻を見せた。本塁打を放った須田は、自身の本塁打について、「持ち味のパンチ力を発揮できてよかった。相手投手は豪快でパワーで勝負してきたので対戦がとても楽しかったし、野球人生で1番気持ちの良いベースランニングだった」と話す。また、投げては先発の足立丈(日本大1年=日大豊山)、2番手石井竜弥(中央大3年=浦和学院)ら4人の投手が完璧な投球を見せ、Giants打線を完封。11―0で圧勝した。先発した足立は、「相手は体が大きく、手足が長かったので、インコースや高めをうまく攻められた」と話す。相手をよく分析して攻略した全日本が、見事にその実力を見せつけた。
■硬式球に対して「縫い目が見えて打ちやすかった」と同志社大・向久保
ところで、今回の交流戦では、Giantsが守備の際には硬式球、日本チームが守備の際には準硬式H号球を使用するチェンジボール方式を採用していた。そのため、日本の選手たちは、Giants戦では普段と違う硬式球を打つことになる。全日本でこの日1番で先発出場した向久保怜央(同志社大3年=花巻東)は「高校時代には硬式球を打っていたが、音や弾きが気持ちよかった。また、球の縫い目が見えるため、非常に打ちやすかった」と話す。また全関東で最終回にダメ押しの適時打を放った大竹一成(関東学院大3年=前橋育英)も、「普段見えない縫い目が見えたのは新鮮だった」と言う。やはり打者目線では、投球の回転が見やすいかどうかの与える影響は小さくない。
逆に言えば、準硬式H号球を初めて打つGiantsの選手にとっては、非常に打ちにくく感じたことだろう。チェンジボール方式での試合は、現地の選手だけでなく日本の選手にとっても、自分たちが普段から使用しているボールの特色を再認識する有意義な機会になったと思う。
また、この日の午後には全関東のメンバーがアデレード大学の大学見学に訪れた。アデレード大学の学生に案内してもらい、大学内の施設を見て回った。まず印象に残ったのは、敷地の広大さである。アデレードの市街地の中心部に位置するにも関わらず、豊かな自然に囲まれ、大きな研究施設や図書館などの建物が連なっており、その歴史と規模の大きさを感じさせた。また、案内役を務めてくれた学生との対談の時間も設けられ、お互いの授業の様子や部活についての話など、互いの大学生活について情報を交換して交流を深めた。
学業との両立を理念とする準硬式野球には、在学中に留学をする部員も少なくない。英語学習に力を入れたい者、将来的に留学を志す者にとっては、特に有意義な時間となったことだろう。
2日目の行程を終え、選手たちは早くもアデレードでの生活に慣れてきたようである。一部の選手たちは、夜にはスーパーでステーキ肉などを購入し、宿舎でBBQを楽しんでいた。こうした異国の地での買い物や自炊の一つ一つが、将来どこかで役に立つ貴重な経験となり、また一生忘れられない思い出になるのだろう。各々が非日常の生活を満喫しながら、夜は更けていった。
(文/鈴木陸太・東京大4年=東海、写真/全日本学生委員)