11月下旬、全日本大学準硬式野球連盟、関東地区大学準硬式野球連盟が3年ぶりにオーストラリア遠征を行いました。22日から豪州・アデレードにて8日間の交流試合、地域交流、プロ野球試合観戦を行い、日本独自の野球「JUNKO」の魅力を発信しました。今回は学生委員として同行した鈴木陸太関東地区学生委員長(東京大4年=東海)による計4回の連載特集です。
■12時間のフライト翌朝の開幕戦。法政大・鈴木歩が決勝打
11月24日、アデレードの天気は雲一つない快晴であった。この日、全日本、関東地区の大学準硬式野球選抜チームである「ALL JAPAN」(以下全日本)、「ALL TOKYO」(以下全関東)と、豪州プロ野球球団「Adelaide Giants」の3チームでのリーグ戦がいよいよ初日を迎えた。準硬式野球界としては、2019年以来、コロナ禍以降初の海外遠征とあり、すべての選手にとって一生忘れられない数日間の始まりである。
この日の第1試合は、全日本と全関東の対戦となった。全日本選手権の優秀選手が集まる準硬式野球界のトップ集団・全日本と、今年全日本3大会(全日本選手権、清瀬杯、9ブロック大会)で3冠を達成した関東の選抜チームである全関東の、両者にとって負けられない対戦である。彼らは前日に合計12時間にも及ぶフライトを経てこのアデレードの地に降り立っており、翌朝9時から試合という非常にハードなスケジュールとなったが、両チームとも夜に宿舎で体を動かすなど、試合に向けて真剣に準備をする姿が見られていた。
試合は選抜チーム同士の対決に恥じない、手に汗握る投手戦となった。全日本先発の佐伯奨哉(同志社大4年=中京)が「チームが勝つことだけを考えて投げました。」と話す通り、両者ともに譲らない緊張感のある展開が続いた。試合は全日本が1ー0でリードする8回、全関東がスクイズで同点とすると、鈴木歩夢(法政大3年=明星)が勝ち越しの2点適時三塁打を放ち3ー1で全関東が見事白星を挙げた。
決勝打を放った鈴木歩は、「全勝という目標で迎えた初戦で、決勝打を打って期待に応えることができてよかったです」と話す。改めて準硬式野球のレベルの高さを感じる、どちらが勝ってもおかしくない好ゲームがアデレードの地でも見られた。
続く第2試合は、全関東とAdelaide Giantsの対戦であった。この試合に1番で先発出場した唐橋悠太(法政大3年=桐光学園)が「オーストラリアのプロのチームと試合をすることは滅多にない経験なのでとても楽しみにしていました」と語るように、選手たちにとっては待ちに待った一戦である。試合は初回から全関東打線が爆発。2回までに7本の長短打を集め、6-1と大量リードを奪う。Giantsの選手も鋭いスイングで次々に強い打球を飛ばすが、全関東投手陣の粘りの投球と好守が光り最小失点で切り抜ける。そしてリードを3点に縮められた6回、全関東が相手のミスにつけ込んで2点を追加し、8-3で全関東がこの日の試合を見事2連勝で終えた。この試合で先発した近野歩飛(神奈川大2年=市立橘)は「体格の大きい選手などが多くいたので、高さやコースなどを意識して丁寧なピッチングを心がけました」と話す。
体格差のある相手に対して技術を活かして対抗し、日本の準硬式野球が世界に通用することを知らしめることのできた試合となった。さらに、試合中にはあちこちで相手選手と英語で言葉を交わし、交流する姿が見られた。野球を通じて心を交わし、純粋に野球を楽しむ選手たちの姿は、海外遠征ならではの光景であった。
■野球人口が1%の豪州、子どもたちに野球普及
また、この日は試合以外でも、多くの交流の機会に恵まれた。まず、この日はアデレード市内の高校生16名が試合を観戦し、1試合目の後に行われたオープニングセレモニーでは記念撮影を共にした。また、午後には試合のない全日本のメンバーが現地の小学校(St Peters Woodlands)を訪れ、ベースボールクリニックと称して野球教室を行った。野球人口が全人口の約1%と、決して野球が超メジャースポーツとはいかないオーストラリアで、子どもたちと野球を通じた交流をできることはとても価値のあることだと思う。今回の遠征を通じて、準硬式野球に限らず、野球に興味を持ち、プレーしてみたいと思う子どもが増えてくれたらと願うばかりである。最後に、今回のベースボールクリニックを中心となって計画した、辻優衣奈(大阪商業大3年=伊丹西)によるレポートを掲載する。
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1日目レポート/辻優衣奈(大阪商業大3年=伊丹西)
オーストリア遠征2日目の午後、オーストラリアの小学校「St Peters Woodlands」を訪れ、野球教室を行いました。学年は様々で約150名の生徒が参加してくれました。
はじめに生徒25名につき全日本選抜選手4、5名が担当し、グループ毎で準備体操やアップを行いました。はじめは少し緊張していた選手も、準備体操時の「1、2、3、4!」の掛け声の後に「5、6、7、8!」と元気な声で返してくれる生徒たちの姿に緊張もほぐれたようでした。その後は準硬式球でのキャッチボールや、テニスボールを使ったミニゲームをグループ毎で行いました。言語は違っても、グローブの付け方からボールの投げ方まで、お互い一生懸命に分かり合おうとする姿がとても印象的でした。
実際に野球教室に参加した真鍋翔(同志社大4年=高松商)は、「日本の子どもよりも積極的に来てくれてとてもやりやすかった」と感想を述べてくれました。言葉は理解できないけれど、ジェスチャーや雰囲気で会話ができたことに驚き、もっと海外の方と関わってみたいと強く感じたようでした。また、今村一心(福岡大3年=佐賀北)は「とても素直で元気のある子どもたちだったので、自分達が笑顔にさせてもらった。」と話してくれました。英語力、特に英語を聞く力を身につけたいと強く思ったようです。
初めは海外の子どもたちと交流することへの不安が大きかったですが、言葉が通じなくても笑顔と感じ取ろうとする姿勢こそが、コミュニケーションに最も必要なことだと改めて感じました。
(文/鈴木陸太・東京大4年=東海、写真/全日本学生委員)