“JUNKOWEB”

準硬式の集大成の2022年。平坦ではなかった道程に「学生主体」の結束力 豪州遠征手記 総括4/4

■2022年は関東で初めてのオールスター戦、女子野球大会参戦
 今回のオーストラリア遠征は、今年の準硬式野球にとって「1年間の集大成」のような位置づけだと私は考えている。全日本大学準硬式野球連盟が主催して、初開催となった甲子園球場での東西対抗日本一決定戦は、試合自体は雨天で中止になったものの、大きな話題を呼んだ。関東地区大学準硬式野球連盟(以下関東連盟)でも、昨年まで行ってきた大会や広報活動のレベルアップに加えて、6月の関東JUNKOオールスター2022や関東準硬式レディースとしてのさくらカップへの参加など新しいことにも積極的にチャレンジしてきた。これほどまでに準硬式野球が前進した1年間はそうそうないのではないかと思う。そしてそんな1年間もいわゆるシーズンオフに差し掛かる11月末のオーストラリア遠征は、5泊(2機中泊)8日と、まさに今年最大級のイベントだった。

 この遠征の開催も、決して平坦な道のりではなかった。関東連盟では過去に何度か行ったことのあるアデレードへの遠征だったが、コロナ禍以降初めての海外遠征だったこともあり、刻々と変わるコロナの水際対策などに苦労した。また歴史的な円安なども重なり、開催が危ぶまれるような状況であった。そんな中でも無事に開催することができたことは、今回総務を務められた関東連盟山田理事長を始めとする理事の皆様、そして現地の協力者の方々のご尽力の賜物であることは間違いない。この場を借りて御礼申し上げたい。

写真中央の(帽子なし)が鈴木陸太(東京大4年=東海)。選手と撮った数少ない記念写真の一つ

■3年ぶりの国際大会。渡豪準備や英語での現地調整も学生が行った
 「野球を通じた交流や海外での生活の実体験による、グローバル化に対応できる人材の育成」と「ハイレベルでの文武両道の実現」。これが今回のオーストラリア遠征の主な開催趣旨である。プログラムにも小学校での野球教室や現地の大学見学ツアーが組み込まれ、また試合後は自由時間となり夕食や移動手段を各自で調べて確保した。遠征と言ってもただ野球をしに行くだけではなく、これから社会に出ていく上で役立つような交流、経験を促し主体性を育む、まさに準硬式野球ならではと言えるような遠征であった。
 そして今回の遠征でも、学生スタッフが中心となって準備を進めた。選手に期限内にパスポートやビザの取得を終えさせること、現地に持っていく野球道具の調整、ユニフォームの作成、SNSや現地メディアでの広報活動にお金の管理まで、業務の大部分を学生が担った。準備期間の短い中急ピッチで業務を進めたが、その中でも工夫を凝らした。遠征前には選手たちにオーストラリアについて教育、日本との交流史など様々な角度から事前学習をしてグループで成果を発表したり、対戦した現地プロ野球球団Adelaide Giantsの選手に日本のお土産を持って行くことで交流を促すなど、遠征をより価値あるものにするよう努めた。また遠征中も、点呼やタイムスケジュール管理など添乗員としての役割もこなし、まさにフル稼働の日々であった。私もその一員として業務にあたり、大変であったことは間違いないが、これも準硬式野球だからこそできる将来に役立つ貴重な経験であった。

 今回参加した学生の中で、特に大きな役割を果たしたのが山下優佳(明治大4年=国際)である。彼女はアメリカへの留学経験を持ち、英語を日常会話は造作もないレベルで話すことができる。現地とのスケジュールやイベント内容のやり取りを準備段階からほぼ1人でこなし、現地でも球団との調整に学生への指示出しと、彼女の存在なしに今回の遠征の成功はなかったと言っても過言ではない。他のスタッフたちも自分の役割を全うし、そして今回の遠征で得た経験を通じて成長してくれた。遠征に帯同せずとも、パンフレットの作成など手伝ってくれた関東連盟の学生委員がいることも忘れてはならない。遠征の裏側にはこんなに多くの学生の努力があったということ、そして準硬式野球がそんな素晴らしい学生が集まり、成長していける場であるということを私は声を大にして言いたい。

鈴木陸太(写真最後列左端)と山下優佳(明治大4年=国際、3列目右から4人目))

■選手兼学生委員として経験した「学生主体」の3年間
 最後に、私は準硬式野球を選手として4年間プレーし、そのうち3年間は関東連盟の学生委員としても活動した。その経験の中で、準硬式野球の1番の魅力は学生主体にあると思う。これは学生委員も選手も同じである。学生委員で言えば、どうすれば大会や遠征をもっと魅力的でプレーしやすいものにできるのか、どうすれば準硬式野球をもっと多くの人に知ってもらえるのか。選手で言えば、どうすればチームをもっと強くできるのか。練習メニュー、練習試合の調整、相手校の分析などなど、工夫できることは山ほどある。これを学生が自ら考え、自ら行動する。そしてその過程の中で成功と失敗を繰り返し、仲間と共に試行錯誤することで、一生物の経験と仲間が手に入る。これが準硬式の誇る学生主体だと私は考えている。

 準硬式野球への関わり方は大学、個人ごとに実に多様であるが、この点では共通しているように思う。そしてその多様性ゆえに、準硬式野球の門戸は非常に広い。そんな大学スポーツの良さが詰まった準硬式野球の今後更なる発展を期待するともに、1人でも多くの中高生が大学生活の選択肢の一つに準硬式野球を加えてくれることを心から祈っている。

(文/鈴木陸太・東京大4年=東海、写真/全日本学生委員)

今秋リーグ戦は13試合に出場。春の早稲田戦では1番ショートで通算2号ランを打つなど選手兼学生委員長として活躍した鈴木

豪州遠征では関東選抜のスタッフとして尽力した鈴木。優勝という集大成を果たした

 

www.junko-web.com

 

www.junko-web.com

 

www.junko-web.com