JUNKOWEB

「もうひとつの甲子園」をかけた思いが激突。香川で開幕した9ブロック大会は関東選抜が優勝

2025年11月14日から16日にかけて、香川県丸亀市と高松市で第43回全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会が開催されました。決勝戦は11月21日の甲子園です。2年前からこのスタイルになったことで、選手たちの目の色が変わりました。「準硬3大全国大会」のひとつである、通称「9ブロック」。激戦だった香川での予選から、甲子園決勝へとつながる選手たちの様子を福岡教育大4年・川原巧太郎(春日)がお届けします。実力でつかむ「もう一つの甲子園大会」にもご注目ください。

9地区の各選抜メンバーが、今年の開催地・香川で激戦

 2025年11月14〜16日に香川県丸亀市・高松市で行われた第43回全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会。この大会は全国を9地区に分け、それぞれの地区の選抜チームが昨年より始まった甲子園での決勝戦の舞台をかけて、1日目は3チーム総当たりの予選ブロック、2日目は各ブロックの1位チームとワイルドカード1チーム(9チームの中で勝ち点、得失点率の順で最も上位で決勝リーグに進出できなかったチーム)による計4チームでの決勝トーナメントを行います。勝ち残った2チームは、11月21日に阪神甲子園球場にて決勝戦を行いました。

【決勝トーナメント】
▽準決勝/11月15日・第1試合/香川・レグザムスタジアム

全九州選抜
200000000=2
000000000=0
全関西選抜

 昨年の決勝戦のMatch Upとなったこの一戦を任された九州選抜の先発は、昨年と同様に九州産業大学・本多岳(3年=大崎)、関西選抜の先発は今大会2試合目の先発マウンドとなった奈良県立医科大学・佐々木陸(3年=北野)が上がります。試合は初回にいきなり動きます。九州選抜はチャンスから関西選抜の野選と内野ゴロの間に2点を先制します。この試合圧倒的であったのは九州選抜先発の本多であった。初回からいきなり2つの三振を奪う立ち上がりを見せると、140キロオーバーの真っ直ぐと大きく変化するカーブで関西選抜を翻弄し、5回無失点と圧巻の投球を見せます。両チーム6回から継投に入り、関西選抜2番手の同志社大学・宮口結太(2年=瑞陵)は力のある真っ直ぐを武器に6回からの4イニングを無失点で抑え、関西選抜に流れをもたらします。

 しかし、そこに立ち塞がったのが昨年の胴上げ投手となった九州産業大・田中翔(3年=東福岡)であった。4イニングを1安打5奪三振と関西選抜の強力な打者陣相手に仕事をさせず、2年連続で関西選抜を下す形で、連覇に向け、甲子園への出場権を九州選抜が獲得しました。

この日も7番セカンドで出場し、チームを引っ張った同志社大学・鈴木遼人(3年=静岡)主将は「実力のある選手が多く、個性の塊のようなメンバーだが、大会に対する、1試合に対する集中力・団結力は凄まじいものがあった。次に会う時は敵になるが、この経験を忘れずに、高め合って結果を残せる関係でありたい」と大会が終わったチームに向けて素直な気持ちを吐露してくれた。

関西選抜の同志社大学・鈴木主将(3年=静岡)

関西選抜の同志社大学・宮口(2年=瑞陵)

九州選抜の九州産業大学・本多岳(3年=大崎)

九州選抜の九州産業大学・田中翔(3年=東福岡)

▽準決勝/11月15日・第2試合/香川・レグザムスタジアム

全関東選抜
010200000=3
00000400✕=4
全中国選抜

 第28回大会以来決勝進出、優勝のない中国選抜にとっては大事な一戦となった。この大切な試合の先発には岡山大学・中曽根熙也(3年=上田染谷丘)があがりました。試合は2回に先頭の岡山大学・石田晋太朗(3年=西城陽)が関東選抜の先発・法政大学・村越仁士克(3年=日本文理)からヒットを放つと、岡山大学・大内悠司主将(4年=大手前高松)が遊撃に強い当たりを放ち、ファンブルを誘い先制に成功します。4回には、またチャンスで大内がレフトを超える2塁打を放ち、5回終了して3−0と大きくリードを奪います。先発の中曽根は5回無失点に抑え、後続に勝利を託します。しかし、試合中盤の6回、眠る獅子が目覚める形で関東選抜が中国選抜を襲います。ヒットとフォアボールでチャンスを作ると、代打の東洋大学・大久保達希(3年=木更津総合)がセンターへ2点タイムリーを放つと、続く1番の早稲田大学・角木理生(2年=早稲田佐賀)がライトへ逆転タイムリーを放ち、4−3と一気に試合をひっくり返します。その後は一気に関東選抜のペースで試合が進み、7回からマウンドに上がった立教大学・三浦隼太郎(3年=札幌国際情報)、抑えでマウンドに上がった専修大学・竹村健太(4年=星稜)が無失点で抑え、中国選抜を振り切り、2年ぶりの決勝進出、甲子園への切符を獲得することとなった。

 中国選抜の大内主将は「選考会から練習を重ねるにつれて絆が深まるのを感じ、一緒に過ごすのがどんどん楽しくなった。今大会が最高の思い出になりました」と長く中国選抜を引っ張った中心選手が最後の大会を振り返った。

中国選抜の岡山大学・大内主将(4年=大手前高松)

中国選抜の岡山大学・中曽根熙也(3年=上田染谷丘)

▽決勝戦/11月21日・阪神甲子園球場

全九州選抜
000000000=0
04000000✕=4
全関東選抜

 今年度の締めくくりとなる9ブロック大会の決勝戦は、昨年の大会では準決勝でまさかのミスもありリベンジを誓う全関東選抜と、連覇を狙う全九州選抜の試合となった。全関東選抜のマウンドには2年生にして先発を託された日本大学・赤岩稜太朗(2年=日大明誠)、九州選抜のマウンドには3年連続の選出であり、今大会初登板となる久留米大学・中居駿斗(3年=創成館)があがりました。初回は両先発無失点で切り抜けますが、2回に試合が動きます。関東選抜の6番の明治大学・鳥越駿太郎(3年=桜美林)が四球で出塁すると、チャンスから8番の法政大学・小林然(2年=花巻東)のライトへの2塁打で先制します。さらに九州選抜のエラーと3番を打つ慶應義塾大学・福田岳杜(3年=慶應義塾)のタイムリーなどで一気に4点をリードします。なんとか追いつきたい九州選抜でしたが、関東選抜の強力な投手陣による継投策に手が出ません。特に3番手でマウンドに上がった明治大学・伊藤彩斗(2年=土浦日本大学)は上位打線から始まる攻撃をしっかりと抑え、九州選抜に勢いを与えません。一方九州選抜も今大会初選出となった日本経済大学・大井手恵太(3年=鎮西学院)、福岡大・原田陽太(3年=華陵)も完璧なリリーフを見せ、望みを繋げます。すると7回に先頭の九州産業大・北原昂明(2年=三養基)が四球で出塁すると、二盗・三盗を決め、1アウト3塁とこの試合初めての得点圏を作ります。しかし、この場面でマウンドに上がった法政大学・遠藤優介(3年=日本大学藤沢)が後続を抑え、九州選抜の反撃を抑えます。そして、最終回。マウンドには関東選抜エースであり、抑えの専修大学・竹村健太(4年=星稜)があがり、先頭を抑えると、最後は143キロの真っ直ぐで見逃し三振に抑え、2年ぶり20回目の優勝を果たしました。

 優勝した関東選抜の早稲田大学・塩尻真生主将(4年=早稲田実業)は「憧れの舞台である甲子園で優勝という最高の結果を残せて本当に感謝している」としつつ「関東選抜は今回の成果に満足せず、連覇を目指して更なる高みを目指し取り組んでほしい」と後輩に向けて更なる期待をかけるコメントを残してくれました。

 一方、連覇を果たせなかった九州選抜の主将・産業医科大学・古本純大(5年=北野)は「強豪を破り、3年連続の決勝戦に進出できたことは、レベルの高さを証明することができており、結果に表れていることがとても誇りに思う。ただ、連覇という目標を達成することができなかったのはとても悔しい。来年は今年の経験を各チームに持ち帰って、還元し、優勝を来年度目指してほしい」と話してくれました。

関東選抜の立教大学・三浦隼太郎(3年=札幌国際情報)


関東選抜の東洋大・大久保達希(3年=木更津総合)

優勝した関東選抜チームが2年ぶり20回目の優勝

 

初回のピンチでマウンドに集まる九州選抜の選手たち
【編集後記】

強豪チームではない自分も、試合で泣ける
大会の裏から、選手たちの輝きを見守ることがやりがい

 全日本の学生委員になって、9ブロック大会の決勝戦まで観戦し、毎年各地区のプライドと誇りを胸に戦う姿を見て「学生委員をやっていて良かった」と感じさせてもらっていました。

 自分ごとにはなりますが、私の福岡教育大学はなかなか全国大会に出るようなチームではなく、全国大会にはいつも私一人運営として参加する3年間でした。ただ今回、私の所属する大学から後輩の選手が1人選出され、試合にも出場した。その姿を見た時に、私が全てのJUNKOプレイヤーに見てほしいと強く願っていた最高峰の舞台を自身の後輩が経験してくれたことの嬉しさと伝えたかった場所を未来に繋げられることの嬉しさからか思わず涙が溢れました。その後輩と甲子園の舞台に共に立てたことは一生の思い出となりました。

 最後に、日頃から運営を行っている学生に対して、選手の皆さんが「日頃運営をしてくださりありがとうございます」と声をかけてくださったり「本当に尊敬しています」といっていただけることが増えました。しかし、私たちのように運営を行う学生は、選手の皆様の最高峰のレベルのプレー、礼儀礼節、その全てに憧れを抱き、力をもらっています。改めて私たちからも感謝を伝えると共に、最高峰の舞台である全国大会に相応しい姿を今後とも見せていただけたらと思います。それが運営をする学生の支えであり、求めている姿であり、最も感謝を伝えられるものであると感じています。

 来年度以降のJUNKOにも「可能性、ひろがる。JUNKO」が広がっていくことを期待しています。

筆者と同じ大学で九州選抜に選ばれた栗山俊翔(福岡教育大学3年=都城泉ヶ丘)

(取材・文/福岡教育大4年・川原巧太郎=春日)

学生たちの活動を応援したい方は
↓↓↓↓
【11月30日までクラウドファンディング募集中です!】
全日本大学準硬式野球連盟では、東西対抗戦と9ブロック大会開催にあたりクラウドファンディングを実施中。運営費や広報活動費に支援費を活用し、大会の成功と準硬式野球の認知度向上を狙いとしています。

学生主体のこの取り組みにも、ぜひご支援ください。

https://readyfor.jp/projects/junko2025