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山形大医学部5年・金原広汰 埼玉西武・佐藤隼輔に負け続けた過去。「今は個人よりもチームが成長する方が嬉しい」

山形大学医学部・金原広汰(5年=仙台第一高)。180センチの恵まれた体格から振り下ろされる最速139キロの直球とキレ味抜群の変化球を武器にマウンドに上がる東北を代表する右腕。学部は医学部であり、野球、学業共に高いレベルにあり、まさに「文武両道」な選手。高校時代は最速140キロ右腕として、宮城県の高校野球を沸かせた。今年で大学5年生になる金原の野球人生について迫った。

佐藤隼輔(現・埼玉西武ライオンズ)に負け続けた過去
 高校は宮城県屈指の進学校であり、野球においても3度の甲子園出場を誇る仙台第一高校(以下、一高)の出身である。高校時代の金原は最速140キロであり、宮城県では注目選手として多くの媒体に取り上げられていた。筆者も高校入学してから初めての試合が一高戦であり、金原の投球のすごさに驚きを隠せなかった経験がある。そんな金原であるが、一高時代に多くの挫折を味わった。金原の同級生であり、同じ中部地区で鎬を削りあった仙台高校・佐藤隼輔(現埼玉西武ライオンズ)に投げ負け続けた過去がある。金原と佐藤は小学生からの付き合い。「小学生のころから叶わなかった。小中高ずっと投げ負け続けた。」と当時を振り返った。また、今年の甲子園を制した仙台育英高校を高校3年生になっても全く抑えられなかったことも味わった挫折の一つだという。

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多くの挫折を味わった仙台一高時代

登下校の地下鉄往復30分が貴重な勉強時間
 一高は県内屈指の進学校である。それ故、必然と授業レベルも高くなっている。金原は、「学校の授業に遅れないように登下校の往復30分の地下鉄の時間で教科書を読んだりして、隙間時間を勉強に充てていた。」と振り返る。野球の練習はかなりハードであり、多いときではダッシュを30~40本も走ることもあり、勉強に充てられる時間もあまりなかったという。そのため、テスト前の部活停止となる一週間で必死に勉強を行い学年で40位程度の順位を維持していた。部活引退後は山形医の現役生のみの推薦入試を志望し、センター試験の学習に的を絞り勉強に励んだ。その結果、センター試験のプレ模試で校内一位をとるなど成績を伸ばし、山形医に合格を果たした。

最初は硬式に入ろうと思っていたが、準硬式のレベルの高さに入部を決めた
 金原は、高校同様に硬式野球を続けようと持っていたが、準硬式野球部のレベルの高さに入部を決めたという。「知っている先輩が準硬にいた影響から新歓に行ったら思っていたよりもレベルが高く、楽しそうに野球をしている雰囲気に心奪われ準硬に入ることを決めた。」と準硬式野球を選んだ理由を教えてくれた。

全国の舞台で自分の力のなさを痛感させられた
 金原は、1、2年次に9ブロック大会の東北選抜の一員として人生初めての全国大会に挑んだ。そこには、チーム内及び対戦相手から自分の力のなさを痛感させられたという。「東北選抜内にいた吉野精隼(2021年卒・東北学院大)さんをはじめとした東北選抜内のチームメイトや、全国のレベルの高さを感じた。」と改めて準硬式のレベルの高さを感じたという。

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大学一年次全国レベルを痛感した9ブロック大会

5年生になってチームの成長を感じることが嬉しくなった
「今の野手陣が入部してから一番頼れる」こう語るように、現在行われている秋季リーグ戦では、2試合合計で16得点を奪うなど強力打線を形成している。金原曰く、「チームのおよそ半分以上が個人でジムに通っており、その成果が現れてきだしたのかもしれない。」という。また、通常であれば大学は4年生で終わりであるが医学部は6年まで続く。金原は、「4年生を終えて5年生になってからチームの成長が嬉しくなった。今は個人よりもチームが成長していることを実感するほうが嬉しくなるように変わった。」とチームの成長を嬉しそうに語ってくれた。

勉強は勉強、野球は野球
 金原は今までの人生で文武両道の体現者であるなどたくさん言われてきただろう。そんな金原に文武両道についてどう思うか聞いた。「野球も勉強も両方やっているというだけでは自然にどちらもできるようにはならないので、両方を切り離して野球なら野球単体の成果でみて、勉強なら勉強単体の成果でみて、どちらも皆が認める成績を残すのが文武両道だとおもいます。ただ、勉強と野球のメリハリをつけられるのは大きなメリットで、息詰まることなく野球の練習中は野球100%、勉強中は勉強100%で、目の前に集中してこなしていくと自分に自信を持てるようになると思います。」と答えてくれた。二頭追うものは、一頭も得ずとのことわざがあるように、メリハリを持った切り替えが重要であるということを再確認させられた。今は国試の勉強と部活をメリハリつけて行っているという。

準硬式という選択がある
 今後、東北の準硬式がよりレベルを上げるにはどうしたらよいか尋ねた。「高校生により注目してもらう必要性があると思う。現在、連盟の方が準硬式のブランディングを頑張ってくれている。より多くの高校生に準硬式という選択があることをしてほしい。」と答えてくれた。

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今後もチームのために腕を振り続ける

「総力結集」この山大医のチームスローガンを胸に秋季リーグ戦優勝に向け金原は腕を振り続ける。また、11月に開催される9ブロック大会に選抜に選んでいただけた場合、1.2年の借りを返したいとも意気込んでいる。東北が誇る秀才右腕はこれまで多くの挫折を乗り越え今があることを知ることができた。今後も金原広汰に注目していきたい。

 

文・東北学院大学 佐々木陽矢

写真・山形大学医学部マネージャー