
令和8年度春季東北地区大学準硬式野球連盟1部リーグで、東北学院大が10勝0敗の全勝優勝を果たし、8月に石川県で開催される科学大臣杯第78回全日本大学準硬式野球選手権大会への出場を決めた。秋季リーグ・関口杯に続く三冠。この代が掲げてきた目標を、ひとつ残らず達成してみせた。しかしこのチームにとって、春の優勝はゴールではなく、全国への出発点に過ぎない。
大所帯を一つにした主将の覚悟
「全員が同じ方向を向けた」
主将・佐藤琳空(4年=柴田)は今季のチームをそう表現する。部員数が増えたことで、選手のレベルも立場も様々になった。試合に出る選手だけでなく控え選手にも目を向け、一人ひとりと積極的にコミュニケーションを取りながらチームを運営してきた。
「全員が納得感を持って活動できる環境づくりを意識することが、主将として最も大変な部分でした」
簡単に言葉にできるが、実践し続けることは容易ではない。それでも佐藤はその姿勢を崩さなかった。
学生コーチの木村優太(4年=青森北)もその点に同じ手応えを感じていた。
「大所帯でありながら、チームとしての目標に向かって個々人が同じ方向を向いて努力できる。それがこのチームの強さだと思います」
選手たちとともに日々の練習を積み重ねてきた木村だからこそ、チーム全体の変化や成長を誰よりもよく見てきた。
マネージャーの井坂美遥(4年=多賀城)はチームの素顔をこう明かす。
「普段はふざけ合っていることも多いですが、練習や試合になると全員が気持ちを切り替えて真剣に取り組めるんです。それがこのチームの良さだと思います」
オンとオフのメリハリ。その切り替えの鋭さが、長いリーグ戦を戦い抜く力になった。
4年生投手陣6人が引っ張ったマウンド
今季の投手陣を語るうえで欠かせないのが、6人の4年生投手たちの存在だ。エースの日下裕翔(4年=柴田)はその魅力をこう語る。
「ピッチャー陣は過去にない仲の良さが魅力で、プライベートでもみんなで遊んだりとどの学年でも関係なく良い距離感でやってこれています。今年のピッチャー陣は誰が投げても試合を作れる能力が全員にあります」

佐藤が「ベストゲーム」と挙げるのは、全勝優勝のかかった最終戦だ。4年生投手陣による継投でものにしたその勝利は、チームの結束そのものだった。
「全員で最後まで集中力を切らさず戦い抜けたことが、1番印象に残っています。チームの結束力と総合力を最も感じられた試合でした」と佐藤は振り返る。
日下はさらにこう続ける。
「一人一人が他の投手を信頼しているので、任されたイニングをしっかり抑えるというところを徹底してやっていければと思います。最後に最高のピッチャー陣と有終の美を飾り、みんなで思い切り喜びを分かち合えたらと思います」
勝利への執念と、仲間への愛着が混ざり合ったその言葉に、このチームらしさが滲んだ。
全試合スタメン出場を果たした内野手・万城目琳久(3年=利府)は、好調の要因を問われると「チームメイトや指導者の支えがあって結果を残せた」と、自分よりも周囲への感謝を先に口にした。チームの雰囲気が個人のパフォーマンスを引き上げる。この言葉は、そのことを静かに証明していた。
「先輩が果たせなかった目標を、自分たちの手で」
三冠を達成したとき、佐藤は「リードを許しても逆転できる粘り強さや、序盤から主導権を握れる投手陣の力など、これまで積み重ねてきた努力が結果として表れた」と語った。秋季リーグ、関口杯、そして春季リーグ。3つの大会すべてで全勝を達成したことは、選手全員にとって大きな自信になったという。
その自信の背景には、昨年の米倉元主将の世代から引き継いだ想いもある。
「昨年の先輩方が果たせなかった目標を引き継ぎ、その想いを胸に全日本選手権へ挑みます」と佐藤は言葉に力を込めた。先輩から受け取ったバトンを、今度は自分たちの結果で返す。それが4年生たちの共通した覚悟だ。

日下にとっては1年生から毎年登板してきた全日本の舞台だが、これまでは毎年悔しさとともに終えてきた。
「これまで一緒に戦ってきた仲間や先輩方の分もリベンジを果たせるのは今回が最後の舞台。泥臭く、綺麗な形じゃなくてもとにかく勝つ、優勝するということが監督・コーチや両親、先輩方への最大の恩返しになると思っています。4年間の全日本選手権で1番の投球をして、後輩にもいい姿を見せて大学野球の最後を飾りたい」その言葉に迷いはなかった。
万城目も「日本一まで、みんなで駆け上がりたい」と力強く言い切った。
舞台は石川・金沢へ。東北の1枠を背負い、頂点を目指す
東北学院大が挑む「文部科学大臣杯 第78回全日本大学準硬式野球選手権大会」は、令和8 年8月21日(金)から26日(水)にかけて石川県で開催される(予備日27・28日)。会場は石川県立野球場、金沢市民野球場、白山市立野球場あさがおスタジアムの3球場。全国から24校が集う中、東北地区に与えられた出場枠はわずか1校。その唯一の椅子を勝ち取ったのが、東北学院大だ。開会式は8月21日17時、石川県立野球場で行われる。
三冠の勢いをそのままに、東北学院大が日本一への挑戦を始める。

文・東北学院大 森美月(3年=泉館山)