
令和8年度春季北信越地区大学準硬式野球大会で、金沢大学医学部が3連覇を達成した。決勝の相手は金沢医科大学。初回に4点を先制しながらも、中盤に追いつかれる苦しい展開となったが、9回に勝ち越し、6ー5で接戦を制した。
「今年の始めから、どうやって3連覇を達成するかを考えてきました」
そう振り返るのは、金沢大学医学部主将の木村真康(3年=早稲田)だ。木村は外野手としてチームに所属し、今大会では主に指名打者として出場。北陸大学戦では初回に適時打を放ち、チームの流れを作る一打を放った。
3連覇へ向けて、全員が役割を考えた1年
金沢大学医学部にとって、今大会は3連覇がかかった重要な大会だった。木村は年始から、チームとしてどう勝つか、そして一人ひとりがどのように勝利に貢献できるかを考えてきた。
金沢大学医学部の特徴は、2年生から6年生まで幅広い学年の選手が在籍している点にある。学年差があるからこそ、個々の力だけでなく、チーム全体で同じ方向を向くことが欠かせない。特に木村が重視したのが、内野守備の連携だった。今季の内野は2年生を中心に構成されており、ケースごとのカバーリングや守備位置の確認を徹底した。
練習では本数を増やすだけでなく、できているプレーに対しても妥協せず、選手同士でフィードバックを行った。
「もう一歩前に出た方がいい」「この場面ではここまでカバーに入ろう」
同学年が多いからこそ、互いに意見を言いやすい雰囲気があった。木村はその空気を生かし、選手同士が技術向上に関わるチーム作りを進めた。
限られた練習時間の中で磨いた連携
一方で、医学部のチームならではの難しさもあった。上級生は実習や勉強の関係で、平日の練習に参加できる時間が限られる。全体で合わせられる時間は決して多くない。
その中で木村たちは、土曜日の練習を重要な確認の場とした。内野だけでなく、内外野の連携、ケースごとの動き、カバーリング、守備位置の確認を重視し、試合で迷いが出ないように準備を重ねた。
限られた時間の中で、何を優先して確認するべきか。主将として木村は、チーム全体の状況を見ながら、勝つために必要な準備を積み上げていった。
決勝で訪れた最大の山場
決勝戦は、その準備の真価が問われる試合だった。
金沢大学医学部は初回に4点を先制。しかし、その後は追加点を奪いきれず、徐々に相手へ流れが傾いた。リードしているにもかかわらず、ベンチにはどこかビハインドのような空気が漂ったという。
それでも木村は、焦りすぎることはなかった。
「相手は後半勝負で来るかもしれないという想定はしていました」
先発の寺下佳孝は、予選から決して本調子とは言い切れない状態だった。それでも、三振を奪う投球だけでなく、打たせて取る投球で試合を作った。疲労は見えていたが、木村の中で簡単に継投する考えはなかった。野手として出場している黒崎宗矩(6年=水戸一)、楠原嵩大(5年=高松一)らを投手として起用する選択肢もあり、寺下の再登板も視野に入れながら、試合展開を見極めていた。
6回に同点とされたが、チームは崩れなかった。9回に4番武智健太郎(4年=前橋)の一打で、再び勝ち越し、最後まで粘り切って3連覇をつかみ取った。

怪我を乗り越え、主将としてつかんだ3連覇
木村自身にとっても、今大会は特別な意味を持っていた。
1年時は同期の選手が自分1人だけで、キャッチボールの相手にも苦労した。気を使わずに話せる相手はなかなかいなかった。それでも、1つ上の代をはじめとする先輩たちに励まされながら、野球を続けてきた。
しかし、順調な野球生活だったわけではない。2年時にはスノーボードでの骨折、さらにノック中の膝の怪我を経験した。公式戦に出ることができず、野球に向き合うことが辛くなった時期もあった。
昨年度チームが連覇を達成した時も、もちろん嬉しさはあった。しかし同時に、自分が勝利に関われなかった悔しさも残った。チームの結果を喜びながらも、自分自身は何もできなかったという複雑な思いがあった。
さらに3年時にも怪我を経験した。それでも木村は、そこで野球から離れるのではなく、再びチームに戻ることを選んだ。
「怪我を乗り越えて、今度は自分がチームに貢献したいと思いました。」
その思いを胸に、木村は地道にリハビリに取り組み、再びチームに向き合った。今大会では決勝で安打こそ出なかったものの、それ以外の試合では得点につながる働きを見せた。そして何より、主将として3連覇を目指すチームをまとめ上げた。
6年生の主力選手にとっては最後の年。投手陣の中心選手も最終学年を迎える中で、3連覇という結果はチームにとって最高の形となった。

目標は全日本での勝利
金沢大学医学部の挑戦は、ここで終わらない。
次に見据えるのは全日本選手権、そして8月上旬に行われる西医体だ。西医体は全日本選手権の2週間前に控えており、チームにとって重要な大会が続く。
木村は全国の舞台に向けて、こう意気込む。
「まずは1勝したいです。試合終了まで粘り強く、勝ちにこだわって野球がしたいです。これまでチームを支えていただいた6年生に恩返しとして、勝利を届けたいです」
と、並々ならぬ思いを口にしていた。また、木村自身も守備に就きたいという思いを持っている。怪我を経験し、出場できない悔しさを味わったからこそ、グラウンドでチームに貢献することへの思いは強い。
3連覇は、ゴールではない。
同期のいない環境から始まり、3度の怪我を乗り越え、悔しさを力に変えてきた木村真康。主将としてチームを導いた先に見据えるのは、北信越代表としての全国での勝利だ。
支えてくれた先輩たちへ。
最後の年を戦う6年生へ。
そして、苦しい時間を乗り越えてきた自分自身へ。
恩返しは、勝利で果たす。
金沢大学医学部の挑戦は、全国の舞台へと続いていく。
文:金沢大学大学院・佐々木由翔(修士1年=一関第一)