
<令和8年度東北地区大学準硬式野球連盟春季リーグ戦・1部2部入れ替え戦:福島大6-5東北工業大>◇5月23日◇仙台市民球場
福島大は3回に先制の3点。4回、5回にも追加点を加え、5-0と試合を優位に進める。しかし東北工業大も食らいついた。5回に3点を返すと、9回にもさらに2点を加え、5-5と試合を振り出しに戻す。決着がついたのは10回タイブレーク。福島大はマウンドに奥村 瑛蔣(3年=仙台南)を送って0で抑えると、その裏に1点をもぎ取り、サヨナラで勝負を決めた。

福島大にとっては令和4年秋以来、4年ぶりの1部復帰となる。当時の入れ替え戦の相手も同じ東北工業大。同じカードでの再戦を、今度は福島大が制した格好だ。
歓喜の輪の中心にいた奥村、満塁の打席に立った小原 諒大(3年=花巻北)、チームを引っ張ってきた志田 隆祥(3年=大船渡)の3人に、試合を振り返ってもらった。
「死ぬ気で抑える」覚悟の右腕
タイブレーク、無死一・二塁から始まる場面。マウンドに立った奥村に、迷いはなかったという。
「この回を抑えれば絶対に勝てると思っていた。自分はどうなってもいい、死ぬ気で抑えようと思ってマウンドに立ちました」
自分の成績よりも、チームの勝利を優先する。「自分はどうなってもいい」と言い切れる覚悟が、福島大に勝利を引き寄せた。最後の打者を打ち取った瞬間、ベンチは大きく弾けた。
「俺が決めてやる」満塁で迎えた最後の打席
打線も、奥村の覚悟に応えた。10回裏、サヨナラのチャンスを満塁で迎える。打席に向かったのは、この日三塁打も放っていた小原だった。誰もが緊張する場面のはずだが、小原の表情に緊張の色はなかった。
「緊張というよりは、“俺が決めてやる”って、ワクワクしていました」
満塁の場面で「ワクワク」と言える小原の度胸が、福島大打線の強みを物語っている。振り抜いた打球は二塁手の前へ。しかし、グラブからこぼれる失策。記録こそ伴わなかったが、小原の一振りが福大にサヨナラの1点をもたらした。
強さの源は「仲の良さ」
ただ、奥村の覚悟も、小原の度胸も、個人の力だけで生まれたものではない。チームのストロングポイントを3人に尋ねると、口をそろえて出てきた答えは、技術でも戦術でもなかった。
「一番は仲の良さ」と小原は話す。「その仲の良さから生まれる一人ひとりの連携、チームプレーが、福島大の強み」
さらに、こう続けた。
「誰かが活躍したとき、本人だけじゃなく周りも喜べるチーム。それが、すごく居心地よかった」
仲間の好結果を「自分のこと」のように喜び合える雰囲気。それが今の福島大の土台になっている。4年ぶりの1部復帰は、その積み重ねが結びついた結果と言っていいかもしれない。

「福島大らしい野球で勝つ」1部の舞台へ
来季の舞台は、これまで以上の熱戦が待つ1部。3人はそれぞれ、新しいステージへの目標を口にした。
最初に話してくれたのは、タイブレークを締めくくった奥村だった。
「ちょっと具体的な目標になりますが、1部のチームはやっぱり2部より打線が強力になってくる。もっと自分のピッチングのレベルを上げて、試合を作れる投手になりたい」
エースとしての責任感がにじむ言葉だ。タイブレークで見せた「死ぬ気で」の覚悟は、来季も福島大の柱になるはずだ。
続いて、小原が打者の立場から目標を語った。
「1部に上がれば、野球のスピードもテンポも上がってくる。挑戦者という気持ちで食らいついて、まずは1部残留を目指したい」
地に足のついた、現実的な目標。そして最後に話したのは志田。掲げたのは、福大の“らしさ”だった。
「1部に行っても、福島大らしい野球。みんなで笑って楽しくできる野球で、勝っていきたい」
“笑って勝つ”。シンプルだが、福大というチームの本質を表した言葉だ。仲の良さを土台に、楽しみながら勝ちにいく。それが志田の語った福大の野球だった。

仲間とともに笑い、楽しみながら勝ち上がってきた福島大ナイン。一つ上の舞台でも、その“らしさ”は変わらないはずだ。「みんなで笑って、勝つ」。このシンプルな目標の中にこそ、4年ぶりに1部の扉をこじ開けた理由が詰まっているのかもしれない。
新たな挑戦の幕が、もうすぐ上がる。
文:東北学院大学 畑中 雄太(4年=仙台南)