JUNKOWEB

【Pick up the game】「何が起きたのかわからない」金大医・寺下佳孝が見せた8回完全投球

 4月18日に幕を開けた、令和8年度春季北信越地区大学準硬式野球大会予選リーグ。その中で、印象的だった試合を金沢大学大学院・佐々木由翔(修士1年=一関第一)が解説する。

Pick up the game

▽5月2日(土)  福光総合グラウンド
金沢大学医学部
2 0 1 1 1 0 0 3 0=6
0 0 0 0 0 0 0 0 0=0
金沢大学教育学部

 5月2日、福光総合グラウンドで行われた金沢大学医学部 対 金沢大学教育学部の一戦は、金沢大学医学部が6ー0で勝利した。試合の中心にいたのは、8回を投げて打者24人を完全に封じた寺下佳孝(6年=金沢泉丘)だった。

 金大医は初回から主導権を握る。先頭の楠原嵩大(5年=高松第一)が遊撃内野安打で出塁すると、盗塁と上野慎太朗(2年=金沢桜丘)の一ゴロで一死三塁の好機を作る。二死後、4番武智健太郎(4年=前橋)が中堅へ適時二塁打を放ち先制。さらに続く山口凌央(2年=小松)の二塁内野安打で武智が生還し、この回2点を奪った。

 3回にも金大医は追加点を挙げる。二死から武智が三塁内野安打で出塁すると、盗塁で二塁へ進む。ここで山口が左前適時打を放ち、3点目。序盤から武智、山口の中軸が得点に絡み、寺下を援護した。

 一方、マウンドの寺下は立ち上がりから圧巻だった。初回を三者連続三振で滑り出すと、その後も相手打線に出塁を許さない。8回を投げ、94球、被安打0、四死球0、16奪三振、失点0。打者24人で終える、まさに完全投球だった。

 3ー0で迎えた8回、金大医は試合を決定づける。先頭の山口が左中間への安打で出塁し、進塁打などで好機を広げると、和出悠矢(4年=豊田西)の四球で一死満塁。ここで井上円(2年=栄光学園)が中犠飛を放ち1点を追加。さらに二死満塁から上野の打球の間に2者が生還し、この回3点を奪った。

 試合後、寺下は自身の投球について冷静に振り返った。
「ストレート、変化球どの球でもストライクが取れたことが1番良かった。打たせて取る意識でストライク先行でき、テンポよく投げることができた」と手応えを口にした。また捕手の武智を中心とした守備陣のプレーにも支えられたという。

 記録については「特に意識はしていなかった」話し、「勝てればどのような形でも良いと思っていた」とチーム勝利を最優先に考えていた。球数も少なく体力面には余力があったものの、8回終了時点で6ー0とリードしていたことから、リリーフへつなぐ形でマウンドを降りた。

「春3連覇はいやでも意識してしまう中で、シード権獲得のために負けられない試合だと思っていた。例年、春予選期間は、ウエイトトレーニングのボリュームを落とさないように意識している。今週の試合に関しては負けられない試合だったので、試合への調整に集中した。投球に集中するためにDHもつけた。結果から考えると、良い準備が出来たと思う」と納得の表情を見せた。

「今までは自分がチームを勝たせる意識だった。今年に関しては、例年以上に黒崎宗矩(6年=水戸第一)、楠原、武智の上級生に頼りながら野球をすることが出来ている。ここ2試合は3人に助けてもらう試合だった。今回の試合に関しては自分も勝利に貢献できたと感じている。みんなでカバーし合いながらこの先の試合も頑張りたい」 と冷静に振り返った。

 一方、敗れた金沢大学教育学部も、寺下の投球を認める。高嶋重杜(3年=高岡南)は決め球のスライダーに対し、「ボールが突然消えた」と語る。また、森田誉士(2年=富山)は「球が来た瞬間、何が起きたのかわからなくなるほどだった」と話す。4番を務めた稲葉玄(3年=石橋)も「想像もつかないようなものすごい球が来た」と脱帽。160球完投の奥村奏太(3年=小松)は「相手投手に与える圧を感じた。変化球のキレなどコンビネーションが素晴らしかった」と圧倒された。

 6年生とラストイヤーながら,なお底知れぬ可能性を秘めた寺下。その圧倒的な投球に、武智、山口、上野ら打線の援護がかみ合った金大医。春3連覇、そして全日本大会での一勝へ懸ける思いの強さを感じる一戦だった。

編集後記

 打者の「何が起きたのかわからない」という言葉が、この日の寺下の投球を最も端的に表していた。8回完全投球、16奪三振という数字以上に、相手打線に何もさせなかった支配力が際立った一戦だった。しかし、その裏にはバックを信じた寺下の姿もあり、チームとしての強さを感じた。

文:金沢大学大学院・佐々木由翔(修士1年=一関第一)