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毎朝5時の自主練習。中京大学、代打が決めた全国の一打

 学生たちが自ら執筆する連載企画「学生が描く、第77回全日本大学選手権大会」。連載第5回目は、東海地区編。10年連続58回目の出場を果たした中京大学です。決勝では愛知学院大学との激戦を制し、代打・小山塁(4年=福井商)の勝ち越し打や、4年生の奮闘が光りました。全国の舞台では前年王者・中央大学に惜しくも敗れましたが、加藤匠翔主将を中心に新チームが「日本一」への再出発を誓います。

全国切符をつかんだ代打の一振り

 優勝すると全日本選手権の出場が決まる東海地区選手権、2回戦、3回戦はコールド勝ち。準決勝も快勝。そして迎えた決勝戦。愛知学院大学との熱戦になった。
 中京大学は2回に四球とヒットでチャンスを作り杉谷寛太(2年=中京大中京)が先制タイムリーで1ー0。3回には菊井啓叶(2年=福井商)のレフトオーバーのタイムリーと竹村悠太(2年=至学館)のタイムリーで3ー0。さらに1点を加えて7回表に4-0とリードを広げた。
 しかしその裏。エラーと2つの四球で1死満塁のピンチとなり、次打者に満塁ホームランを打たれる。4-4。試合がどちらに転ぶかわからない状況となった。
 8回表、先頭打者杉谷の四球などで2死二塁のチャンス。バッターボックスに代打・小山塁(4年=福井商)が立った。1ストライク2ボールからストレートを詰まりながらライト前に運び勝ち越しのタイムリーで5ー4とする。小山は毎朝5時から自主練習に取り組んでいた選手。気持ちの乗った素晴らしいタイムリーを放った。この後、中継ぎの小林蓮也(4年=水口東)が8、9回を無失点に抑え、東海選手権優勝と全日本選手権の切符を手に入れた。
 代打・小山をはじめ4年生が意地を見せた熱戦。苦しんだ末につかんだ格別の勝利だった。

代打で勝ち越しタイムリーを打った中京大の小山塁(4年=福井商)

初戦で中央大学に屈する

 10年連続で切符をつかんだ中京大学。全日本選手権の出場は58回目にものぼる。抽選の結果、初戦の相手は前年覇者の中央大学。選手たちは中央大学を絶対倒そうとより気合を入れて取り組んだ。
 中京大学は2回に先制されるも、序盤は再三のピンチを乗り切り4回終了で0-1。王者と互角の戦いを見せた。5回の攻撃。先頭打者が倒れたが、続く山内健真(4年=掛川西)がチーム初ヒットとライトが打球を後逸する間に快足を飛ばし1死三塁、一打同点のチャンスを作る。
 しかし、後続に一本が出ずチャンスをものにすることができなかった。その後も中央大学の守備に阻まれ、試合は0ー6の敗戦となった。この試合をもって4年生は引退となった。試合後のミーティングでは皆が涙を流し今までの感謝と後輩へ悲願の日本一を託した。
 日本一の目標を託された加藤匠翔(3年=至学館)は「全国の舞台で、自分自身の力のなさを痛感しました。その一方で、4年生の頑張りや存在の大きさ、ありがたみを強く感じました。先輩方が積み重ねてきたものの上に自分たちが立っていることを実感し、感謝の気持ちが大きくなりました」と決意を新たにした。

山内健真(4年=掛川西)も安打を記録し好機を広げた

新主将に就任した加藤匠翔(3年=至学館)は来年の優勝へ決意を新たにした

再出発。「日本一」を目指して

 新チーム主将には加藤が任命された。加藤に準硬式を選んだ理由を聞くと「自分自身、全国大会の経験がなくても、ここには『日本一』を本気で目指せる環境が整っていました。だからこそ中京大学準硬式野球部を選びました」と話す。「日本一」を目指す強い意志が感じられた。
「これまでの先輩たちの努力に応えるのは、もう自分たちしかいません。その思いを胸に、負けないチームをつくり、必ず日本一を目指します」。
 今大会をもって引退するが中京大学の日本一を信じて応援し続けたいと思う。

過去9度、全国制覇している中京大学。王者復活の思いを下級生が受け継ぐ

(取材・文/中京大学4年・小林寛太=玉野光南)