令和7年度春季北信越地区大学準硬式野球大会(6月7日〜9日/予備日10日)が、長野県内で開催される。4・5月に行われた予選リーグを勝ち抜いた12校が、本戦トーナメントに挑む。優勝チームは8月に北海道で行われる全日本選手権の出場権を得られる。
今回は北信越地区大学準硬式野球連盟の学生広報が、本戦トーナメントの注目チームをピックアップ。紹介するのは、北信越地区の強豪として名を馳せ、2023年には医学部学生の大会・東医体を勝ち抜き、全医体で頂点に立った新潟大学医学部(以下、新医)。常に優勝候補として注目を集める存在だ。チームを率いる主将やキーマンたちを取材し、今大会への意気込みとチームの現在地を探った。
限られた練習環境でも確かな工夫を
新医の練習は、平日に2日、さらに土日いずれか、もしくは両日を加えて、週3~4日の頻度で行われている。平日は附属小学校のグラウンドを借用し、マシン打撃などを中心に練習を実施。土日は球場を確保して、ノックやハーフ打撃、実戦形式の打撃練習に取り組んでいる。
北信越地区の準硬式野球部の中でも、時間や環境面では比較的恵まれているといえるが、それ以上に注目すべきは選手たちの練習姿勢だ。ティーやノックの1球ごとに、「なぜうまくいったのか」「なぜ失敗したのか」を考え、反省し、次に活かす姿勢が徹底されている。ミスを軽視せず、1球に対して常に意図を持って取り組む。その積み重ねが、チーム全体の成長につながっている。
昨秋、新医は金沢大教育学部に悔しい敗戦を喫した。今大会ではその雪辱を胸に、強い思いで再戦に臨む構えだ。そして、毎年定期戦を重ねる昨年の王者・金沢大医学部は、越えなければならない。チームの実力が試される戦いが、いよいよ目前に迫っている。
勝利を支える“上級生トリオ”
新潟大学医学部の躍進を支えるのは、実力ある上級生たちだ。エース格の一人、小松健太郎(5年=旭丘)は、伸びのあるストレートと多彩な変化球を自在に操る右腕。先発・中継ぎを問わず安定感ある投球を続け、チームの勝利に貢献している。同じく5年生の間中直悠(5年=市立南)は、球速以上に速く感じさせる投球術と抜群の制球力が武器。頭脳的なピッチングで相手打者を翻弄し、試合の流れを作る。そして、打撃の柱となっているのが渡邉啓太(6年=新潟)。主にクリーンナップを務め、高い出塁率と勝負強さで攻撃の起点となり、チームを勢いづける存在だ。
上級生の活躍が目立つがゆえに、下級生の台頭が気になるところだ。その点について、主将の高橋佳樹(4年=岐阜北)は次のように語る。
「今出場している選手の多くは、比較的若い学年から試合に出場していた選手です。だからこそ、彼らが卒業した後のチームは正念場になると思っています。部内には大学から野球を始めた人や、小学生までしか野球経験のない人、高校野球までやっていた人など、さまざまな背景を持つ選手が在籍しています」
現時点では上級生が主力を担っているが、決して依存しているわけではない。新医では、経験豊富な選手が指導役となり、全体のレベルアップを図る取り組みが行われている。
例えば、内野守備ではゴロ捕球などの基礎練習を動画に収め、選手同士で映像を見ながらフィードバックを交わす場面も多い。技術面だけでなく、学年の垣根を超えて意見を言い合える風通しの良さも、チームの大きな強みだ。
野球初心者や経験の浅い選手が多く在籍しているからといって、練習の雰囲気が甘くなることはない。全員がそれぞれのレベルで真剣に野球と向き合い、真摯に取り組む空気がチーム全体に流れている。
また、新歓活動にも力を入れており、選手一人ひとりが満足に練習に取り組める環境は、新入生にとっても大きな魅力となっている。
空前の筋トレブーム
チームとしての成長を支えているのは、日々の練習だけではない。いま、新医では“空前の筋トレブーム”が巻き起こっている。練習日以外にも時間をつくって筋トレや素振りに励む選手が増えており、その熱意は日常生活にも及んでいる。活動時間の枠を超えてもなお、準硬式野球に真剣に向き合う姿勢。それが、チーム全体の底上げと団結力につながっている。
チームを支えるマネージャーVOICE
「新潟大学医学部準硬式野球部は、チームが一戦でも多く勝利することを目標に、日々真剣に練習に打ち込んでいます。練習時間外には、素振りや筋トレなどで仲間と切磋琢磨し、常に高みを目指す素敵なチームです。その努力や成長を近くで支え、見届けられることをマネージャーとして誇りに思っています。今大会でもこれまで培ってきたチームワークと全力のプレーで最後の一球まで粘り強く戦ってくれることを信じています。選手達へのあたたかい応援をよろしくお願いします。」
終わりに
「優勝して全日本に出場します」その一言に込められた様々な挫折や苦労、新医は今年こそ壁を越えて、全日本の舞台で輝いていく。
チーム自己評価(5段階)
打撃力 ★★★★☆
守備力 ★★★☆☆
走塁力 ★★☆☆☆
団結力 ★★★★★
投手力 ★★★★★
(文:佐々木由翔 4年=金沢大学)