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準硬式の新たな挑戦。「関東準硬式レディース」が誕生したわけ

 栃木県で開催された女子硬式野球大会「第2回栃木さくらカップ2022」(8月9日開幕)に「関東準硬式レディース」というチームが初参加しました。このチームは関東地区大学準硬式連盟所属の選手1名、マネージャー11人の計12人で結成されたチームです。同連盟には現在マネージャーを中心に約300名の女子部員がおり、その中から有志12人が集まりました。

関東地区大学準硬式野球連盟(以下関東連盟)は、「野球を愛する女子選手を応援したい」という思いのもと今年2月に女子準硬式野球準備委員会を立ち上げ、女子選手が大学で野球を続けるための環境整備に力を入れて活動しています。その活動の第一歩が今回の「関東準硬式レディース」の結成でした。選手12人は全員が野球、ソフトボール経験者ですが、ほとんどがマネージャー。所属大学もバラバラな“即席”のチームでしたので、練習も十分にできるわけではありません。それでも、限られた時間の中で「楽しむこと」をテーマに大会に向けて調整してきました。

準硬式では初となる「栃木さくらカップ2022」に出場。関東地区の女子部員が初めて公式戦に参加し歴史の第一歩を刻んだ

彼女たちがこのチームを通じて伝えたかったことは「女子野球の楽しさ、大学で野球を続ける楽しさ、準硬式野球というフィールドで女子選手として活躍することの楽しさ」。でも、即席のチームでどこまでできるかわかりません。運営に関わった私も初めてとなる大会出場に不安がありましたが、彼女たちの姿を見て不安を上回る大きな期待がありました。

■同じユニホームを着て、いざプレーボール!
そして迎えた初戦は、対戦相手が辞退したことにより不戦勝。2回戦に駒を進めた関東準硬式レディースの大会初の対戦相手は、埼玉西武ライオンズ・レディース。NPB加盟球団公認の女子硬式野球クラブチームです。初回に失点し、やはり力の差は歴然でした。しかし、7点ビハインドで迎えた3回。9番河嶋明花(東京大・4年=春日部東)が中前打で出塁すると、2番千葉愛澄(横浜国立大・2年=本庄東)が左前打を放ち一、二塁。続く3番川上さくら(高崎健康福祉大・3年=健大高崎)が左中間を切り裂く適時打を打ち1点をもぎ取りました。大会規定により4回コールドの1-11の敗戦となりましたが、強豪を相手に全員で勝ち取った1点。全力で野球を楽しみ、終始笑顔が溢れた試合となりました。

試合は敗退したが、ベンチでは選手たちの笑顔であふれた。勝敗だけではないやりがいをこの大会で得ることができた

チーム内で唯一連盟に選手登録をしている川上さくら(高崎健康福祉大・3年=健大高崎)は「最初は選手が1人というのもあり、誰も知らない状態でとても不安でした。ですが練習をしていくうちに周りとのコミュニケーションを取れるようになり、とても雰囲気のいいチームで楽しく活動出来ました」と話し、参加した選手全員が「楽しかった」と心から叫ぶ光景がありました。彼女たちは女子野球の楽しさを存分に分かち合い、関東準硬式レディースの初めての挑戦は、最高の笑顔で幕を閉じたのです。

女子選手として活躍する川上さくらさん(高崎健康大3年)はタイムリーを放ちチームを引っ張った

■女子選手と準硬式の「これから」
準硬式野球部に所属する女子選手は、普段は男子選手に混じって活動していますが、勝敗のかかる真剣勝負のリーグ戦の中では実力が足らず、現時点では試合に出る機会がほとんどありません。そこで、今回のように女子チームを結成して、女子野球大会に参加する機会を増やせば、選手としてプレーすることができます。この大会に参加したことで、準硬式野球はもう男子選手だけのフィールドではないことを示せたと思っています。

女子選手も、大学で野球を楽しむ場所がここにある。そして、準硬式野球で女子選手は輝ける。今後は女子野球の明るい未来を目指して、大学でも野球を楽しむ女子選手をもっと増やすために、各大学の女子選手による合同練習の実施や女子高校野球選手向けの情報発信などを行い、女子選手が輝ける場を作りたいと考えています。これからも、私たち関東地区連盟は女子選手の可能性を拡げ、挑戦を続けていきます。

共栄大3年の近藤日南さんは埼玉の強豪校の花咲徳栄の出身

都立瑞穂農芸出身の笠原唯来さんは日本獣医生命科学大で学びながら準硬式を楽しんでいる

染谷樹吹さんは共栄大の2年生。近藤さんの高校の後輩として共栄大で準硬式の道に進んだ

KANTOの文字をあしらったおそろいの新ユニホームで戦った栄えある1期生。女子選手の活躍が全国に拡がることを準硬式連盟は願っている

(レポート:東洋大学 堺澤聡子)